今週の風の詩
第3937号 ふうせんかずら(2024.7.28)
ふうせんかずら
東風海(ペンネーム)
街で時々見かける緑のカーテンといえば、ゴーヤが多いようだ。びっしりと茂るので日陰にはなりやすいが、たくさん実がなりすぎて持てあますこともあるだろう。
私のおすすめは「ふうせんかずら」である。その実はまるで緑のぷっくりした紙風船のよう。それがいくつもなって、風に揺れている姿はなんともかわいらしい。
春先、初めて挑戦したときには芽出しが遅くて気をもんだが、気温が上がるにつれて無事に芽を出した。初めての作物を育てるのは、わくわくするものだ。やはり実際にやってみないとわからない。ぎざぎざの薄い葉が重なり合っているのも、わき芽が旺盛に伸びてあっというまに緑の壁と化すのも、白くて小さな愛らしい花が次々と咲くのも、育ててみて初めて実感できたことである。
世の中が暑くなるころには薄い皮がふくらんでくる。紙風船のように四角い緑の実がならんで風に揺れるさまを見ていると、音はないのに鈴の音が聴こえてくるようだ。それだけで涼しくなる気がする。
実はふくらんだまま、やがて茶色く枯れ、落ちもせずそのままぶらぶらとぶら下がっていた。手に取ってぱりぱりと割ると、中から種が取れる。直径五ミリほど、黒くて丸い種だが、一部が白くハートの模様になっているのもおもしろい。
我が家の狭いベランダに日陰を作るカーテンは、洗濯物の陽当たりを奪い、実はやっかいものですらあるのだが、それでもついつい育ててしまう。毎年、ベランダの柵に沿ってツルを這わせ、夏の風物詩となっている。