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今週の風の詩

第3933号 土地と人と空間に感謝して(2024.6.30)

土地と人と空間に感謝して
山口典子

 お互い都会育ちの私たち夫婦が結婚して住んだ所は、縁もゆかりもない地方都市であった。私たちが憧れていた田舎生活のスタートである。
田舎といっても駅前にはモールもデパートもある。その辺りは不自由なく、程よい田舎暮らしを経験できる所であった。私はその頃、田んぼや畑仕事をしてみたいと思い始めていたので、胸躍らせながら移住した。
 その地では3年ほど生活した。最初は家庭菜園から始め、最終的には田んぼを一反強借りて稲作も経験させてもらった。わずか3年ほどではあるが、土に触れあう中で自然と友人や知り合いもたくさんできた。特に田んぼはほとんど手作業でやったので、子供から大人までかなりの方に手伝ってもらった。
 3年の月日が経ち、引越しが決まった途端「この土地と離れるのが寂しい」という強い想いが沸き上がったことは、今でも鮮明に覚えている。大地に触れあって生活していると、こんな思いが湧くものかと思った。都会暮らしの時は全く分からなかったことが、自分が経験することで畑仕事の知識も増えた。私たちは現在山暮らしをしていて、畑と猫の額ほどの田んぼをしているが、この時の経験が大いに役立っている。
 先日、5年ぶりにかの地へ行った。私たちが借りていた田んぼや畑を見に行ったり、当時仲良くさせてもらっていた友人たちと久しぶりに再会した。月日は経ったけれども、中身は変わらず楽しいひと時を過ごすことができた。またお互い今でも大地に触れあっているので、私は勝手に深い繋がりを感じた。5年という歳月は短いようで、実は長い。お世話になった方の中には亡くなった方もいた。変化は世の常ではあるが、変わらず元気に集えた友人たちに深い感謝の念が湧いた。そして5年前に思った「この土地と離れるのが寂しい」と、思った時の「土地」とは、その地に住み私とともに過ごしてくれた人たちとのことをメインに指していたのだなと気づくことができる旅であった。

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