今週の風の詩
第3970号 ムスメのワガママ孝行(2025.3.16)
3月になった。
新卒以来の単身生活にピリオドを打ち、実家に戻って来てからもうすぐ丸2年が経つ。
一切他人を気にする必要なく、自分のペースだけで生活全てを構築できる独り身の日々はさしずめ本当に「おひとり様天国」で、その生活が長かったこともあり、出戻り当初はフラストレーションを感じたこともあった。
自宅のリフォームや近所の方の引っ越し、建て壊し。戸建の建設ラッシュにマンションの解体。
この2年間だけをとっても、実家も、そしてこの近辺も随分変わりしたが、その中でも痛感したのは、「自分の両親も年を重ねる」という当たり前の事実だろう。
頭では理解していても、時たま会うのと毎日顔を合わせるのでは、その実感はまるで違った。
『親孝行したい時に親はなし」という言葉があるが、これはなにも親の死後に限った話ではない。
無論親孝行したいが為にではなく、私自身が共に行きたいから誘うわけだが、例えば旅行に行こうと誘っても「もうそんな体力ないから」と断られてしまったら、それはもう実現できないことなのだ。
幸いなことに私の両親は未だ健在だが、それでも親自身に行動が伴う場合、制限なしの共有の思い出を作れる時間は切ないほど短い。
「不変で絶対的存在だと思っていた両親でも「いつか」に近づいている」
避けてきたこの事実を直視すると途方もない悲しみと焦りに襲われるが、未だなんとか親の健在な今の段階で実感できただけでも、私は実家に戻ってきて本当に良かったと思う。
どんなに冷たくしてしまっても変わらず31年愛を注ぎ続けてくれた大好きな両親に、私はもっとたくさんの思い出作りの提案していきたい。
そしてあわよくばその実行の過程で体力をつけて、元気にどこまでも長生きして欲しい。
まだまだずっと一緒にいたいんだからね。まだまだずっと、私のワガママに付き合ってもらうよ。
一緒に出掛けて一緒にたくさん過ごそうね。だからずっと長生きしてね。