今週の風の詩
第3968号 ランドセルと制服(2025.3.2)
ランドセルと制服
佐藤塩胡椒(ペンネーム)
小学校の入学準備で、ランドセルを選びに行った。
入学おめでとうの文字と共に、ずらりといろんな色のランドセルが並んでいた。形はほとんど同じだが、色はもちろん、施された刺繍やハトメの形、内側の仕様の違いにはかなりの種類があって、決めるのが大変だった。色は好きだけど細かいところが気に入らなかったり、表にリボンやハートの刺繍がたっぷり入っているものがいいと言えば、少し子供っぽいんじゃない、と嗜められたりした。母からの助言で「ずっと好きでいられそうな色で、お姉さんぽいもの」を基準に選ぶことにした。売り場を何軒か周り散々悩んだうえで、大好きなピンク色のなかでも上品なローズピンクのものを選んで買ってもらった。内側にプリンセスの刺繍があしらわれているものだった。好きな要素がたくさん詰まっていて、すぐにお気に入りになったし、何だかお姉さんに近づけた気がして嬉しかった。このランドセルを背負って小学校に行くのが楽しみで仕方なかった。
登校初日はランドセルに合わせてピンク色のスカートを履いて行った。ランドセルはピカピカで体には不釣り合いな大きさだった。
何度か春が巡って迎えた卒業式の前日。
家に帰って床におろしたランドセルは、何だか少し色褪せて、小さく見えた。
私は最近、もっぱら黒やグレーの服を着ている。ピンクはもう、1番の好きな色ではなくなってしまった。
中学の制服をはじめて試着をした時、少しそわそわして、初めてランドセルを背負った日の、あの高揚感が蘇ってきた。結局少し大きめのサイズを買ってもらうことにしたけれど、きっとこの制服も卒業する頃には小さくなっているだろうなと思う。
大好きな色でお気に入りだったランドセルも、今ではどこか遠く、懐かしく見えるみたいに。
春は期待と緊張の混ざり合った、少しくすぐったい季節。けど今の私はもう、また何度か春が過ぎていけば、背伸びしていたことを懐かしむ日がくるのを知っている。
入学おめでとうの文字と共に、ずらりといろんな色のランドセルが並んでいた。形はほとんど同じだが、色はもちろん、施された刺繍やハトメの形、内側の仕様の違いにはかなりの種類があって、決めるのが大変だった。色は好きだけど細かいところが気に入らなかったり、表にリボンやハートの刺繍がたっぷり入っているものがいいと言えば、少し子供っぽいんじゃない、と嗜められたりした。母からの助言で「ずっと好きでいられそうな色で、お姉さんぽいもの」を基準に選ぶことにした。売り場を何軒か周り散々悩んだうえで、大好きなピンク色のなかでも上品なローズピンクのものを選んで買ってもらった。内側にプリンセスの刺繍があしらわれているものだった。好きな要素がたくさん詰まっていて、すぐにお気に入りになったし、何だかお姉さんに近づけた気がして嬉しかった。このランドセルを背負って小学校に行くのが楽しみで仕方なかった。
登校初日はランドセルに合わせてピンク色のスカートを履いて行った。ランドセルはピカピカで体には不釣り合いな大きさだった。
何度か春が巡って迎えた卒業式の前日。
家に帰って床におろしたランドセルは、何だか少し色褪せて、小さく見えた。
私は最近、もっぱら黒やグレーの服を着ている。ピンクはもう、1番の好きな色ではなくなってしまった。
中学の制服をはじめて試着をした時、少しそわそわして、初めてランドセルを背負った日の、あの高揚感が蘇ってきた。結局少し大きめのサイズを買ってもらうことにしたけれど、きっとこの制服も卒業する頃には小さくなっているだろうなと思う。
大好きな色でお気に入りだったランドセルも、今ではどこか遠く、懐かしく見えるみたいに。
春は期待と緊張の混ざり合った、少しくすぐったい季節。けど今の私はもう、また何度か春が過ぎていけば、背伸びしていたことを懐かしむ日がくるのを知っている。