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今週の風の詩

第3966号 人生の鍛錬~優しさに触れて(2025.2.16)

人生の鍛錬~優しさに触れて
なると金時(ペンネーム)

娘(5才)初めてのピアノ発表会。会場は近所にできたばかりのぴかぴかの市民ホール。まだ一度も訪れたことがないが、ホームページで確認すると約1200席あるという。そんな大舞台、母の私は出演する訳ではなく袖で見守るだけだが、リハーサルを終えると緊張が走る。娘もお友達も緊張しているのか口少なで、表情が硬い。当たり前だ、私が小さい頃もそうだった。いつの時代も舞台に立つ、ということは特別な経験で手に汗を握る。

直前のリハーサルを終えるとさらに緊張してきた。着慣れない衣装を着ている娘は口には出さないもののすでにお疲れモード。リハーサルが終わり本番までの時間に各自お昼を取ることになっていたので、一旦会場の外へ。娘と近くのチェーンの喫茶店まで歩こうかということになり、歩いていた時、前からお散歩中のおばあちゃん(推定80齢ほど)が、キラキラした目を向けてこちらに歩いてくる。

どうみても目が合ってしまっている私はこんにちは…と言いかけようとした瞬間、「あらまー!お嬢ちゃんそんなかわいい格好してどこ行くん?何かの発表会でもあるん?」と娘と私を見ながらこちらの方言(分かる方には分かりますよね)で話しかけられた。私が「ありがとうございます。これからピアノの発表会なんです」と答えると「ほうねー!かわいいわ〜。お母さんも素敵じゃわ〜上から下まで綺麗にしてから」と。こちらがお礼を言う間も無く「ほじゃがんばってね」とささーとお散歩に戻られた。

娘をかわいいと言ってくれた人は今までも時々いたが、母のことまで褒めてくれた人はきっと彼女が初めてだった。娘も私もその声かけにほっこりした。「おばあちゃん優しいね」と話し、発表会への足取りが親子とも軽くなった気がした。

勝手に80齢ほどと推定してしまったのだけれど、私も相手の足取りを軽くしてしまうような、そんな声かけがさらっとできる婦人になりたいと密かに思ってしまうのであった。

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