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今週の風の詩

第3948号 しあわせの(2024.10.13)

しあわせの
辻 京子

 秋晴れの日知人の急逝を聞いた。その人とは夏まえに会った。植え込みのアジサイがきれいだった。日陰を選んで歩いた。そう6月だった。長時間居られるからとファミレス。焼き鳥やビール、ポテトサラダに唐揚げ。メールに返信がないなぁと思ったが、そのうち忘れてた。共通の友人をとおしてその連絡はいきなりきた。心不全で本人もわからないうちに?と弟さんは言った。七月というからもう三か月も前のことになる。

 そんな時、残り時間を意識する。何してる時がすき?
いつもの散歩道で風を感じる時、あっ彼岸花が咲いてる、これは金木犀の香り、樹々の繁る夏は涼しく、木の葉の落ちる冬は陽が当たってあったかい好きな道。
気のおけない友人とのとりとめもないおしゃべり、っていうかその待ち合わせ場所に向かってる時間。普段入れないお高めの店に子供たちが連れていってくれ雰囲気や器や彩りやさすがというお味やしつろいにひたるとき。最近は長崎旅行での新鮮な刺身、大将おまかせの握り寿司、煮魚に至福のひととき。合間に仕事の話をきく。うん、楽しそうにやってるな。
 本屋であてもなくぶらぶら見て歩くのも心が開放されて好きな時間だ。出先で電車の窓から流れる景色を見るのも良い。線路際の家、田んぼの中の家、坂の上の家、山の中の家、それぞれに面白い。
 川沿いのサイクリング道路、光る水面、ゆれるススキやコスモス、暑いの寒いの向かい風だのブヨがバチバチ当たるのと文句言いながらそれはそれで楽しい時間。気がつけば鼻歌。
 特に用事がない日に窓際でのんびり新聞を読むのも悪くない。
 なんてつつましいことか、とちょっと自分をいじらしく感じる。


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