第 3866号2023.03.19
「一頭の蝶」
Aki(ペンネーム)
夫の母はいわゆる天真爛漫な性格で、80代になっても頭も気力 も旺盛。毎月まるで合宿のような麻雀漬け2泊の旅行へ行った りと、大好きな麻雀に明け暮れる毎日。 こちらの心配をよそに好きなようにやって、言って… 嫁の私としては振り回されることも多く、何かと大変なお姑さ んでもありました。 そんな母も晩年は徐々も体力も落ち、度重なる転倒、更に目 も悪くなり大好きな麻雀もままならなくなりいろいろな方の お世話になりながら91歳の天寿を全うしました。 七七日の法要、納骨を無事終え、墓前でひとり息子の夫と私 の二人きりになったとの時、どこからともなく一頭の蝶がひら ひらとやって来て、くるりと墓石を一周し、ちらりとこちらを 振り返ったかと思うとすーっとどこかに飛んで行ってしまいま した。まるで母がいつもの調子で「じゃあね、行ってくるわ」 と駆けて行ったかのように… 夫と二人「今、お母さんの後ろ姿見えたよね、お父さんや兄姉 の所へ走って行ったね」と笑い合いました。 聞くところによると古くから蝶は゛魂の化身″といわれてい るとか。 好奇心旺盛な彼女の事、今頃あちらで皆さんを振り回しなが ら、楽しくやっている事でしょう。 私達の周りを一陣の爽やかな風が吹き抜けた、そんな気分にな りました。