第 3865号2023.03.12
「五円玉」
信田 百合子
五円玉を紐で結ぶおまじない。 二枚の五円玉をピカピカにみがき、紐で結んで小物入れ等に入 れ大切に持ち歩く。五円は「ご縁」と同じ響きを持つことから、 昔から良縁を運ぶ力があるとされている。一定期間持ち歩けば すばらしい友人も連れてきてくれるようだ。 私も五円玉を二個ピカピカにみがき、橙色の紐で結んで持ち 歩いている。コロナ禍で外出も以前より減ったが、五円玉二個 をもっているだけでちょっと幸せな気分になれる。 けれど、今や硬貨は銀行のATM、窓口では出し入れするだ けで手数料がかかる時代になった!驚くばかりである。いくら 合理化、効率化の世の中になったとは言え、扱うだけで手数料 がかかるのは納得できない。重みのある硬貨はそれだけで存在 感がある。特に穴があいた五円玉は稔りの稲穂がデザインされ ていて、「ご縁」との言葉が掛けられ大切にされてきた。お賽 銭としてお寺や神社に上げるのはもちろん、清められてリボン をかけられたり和紙に包まれてお参りの印として渡されたりし てきた。それを頂くと心がふっくらしたものだった。 世の中、だんだん実態の掴めない空虚なものに囲まれていく。 存在感がうすれていき、いいご縁がなくなっていく気がする。 紐で結んだ五円玉が小物入れを開けるといきいきとして、いつ も元気づけてくれる。これからも大切に持ち歩くつもりです。