第 3861号2023.02.12
「61歳の献血」
省子(ペンネーム)
61歳を迎え、意を決して人生2度目の献血をした。 最初は忘れもしない23才。大学卒業後に就職した会社では 献血車が来ると新入社員が献血するならいになっていて、行って きま~すと手を振りながら意気揚々と出掛けたわたしはあろうことに 献血直後、貧血を起こして倒れ2時間もベッドで寝ていたのだ。 ただでさえ忙しい医療関係者に大迷惑をかけアリンコのように小さく なってスゴスゴと職場へ戻ると、帰りが遅いと心配していた上司や 先輩には大爆笑され、以後誰に会っても「献血し貧血で倒れたお嬢さん」 と呼ばれた。それ以来、街で献血の呼びかけを聞くたび "申し訳ありません。 またご面倒かけてしまうのでできないのです" と心で詫び続けて38年。 コロナ感染でますます献血者が減っているというニュースを見て、 そろそろ再トライしてみてもよいのでは?と「呪縛を解く」行動に出たのだ。 恐る恐る訪ねた献血会場は広々とした快適な空間で、過ごすこと1時間。 とても親切なスタッフの方々がてきぱき対応してくれ、 さらにお礼まで言われなんとか無事、献血することができた。 たった200mlのわずかな血液が誰かの役にたってくれるならば、 こんなに嬉しいことはない。20才の献血ならず、61才の遅すぎる献血と なってはしまったが年齢制限を迎えるまで可能な限り続けようと誓った。