第 3829号2022.07.03
「私の梅干し」
2児の母(ペンネーム)
昨年、初めて梅干しを作りました。完熟梅の何とも言えない香りに癒され、 工程ひとつひとつに戸惑いがあり、仕上がりに一喜一憂し、それでもまた今年 も作ってみようと自然に思えたのでした。 梅干しと言えば、祖母が土用干しをしていた姿を思い出します。小さい時分 の私が両手を広げたくらいの大きな盆ざる3つか4つにそれぞれ一杯、びりっ と晴れた日の庭先に、祖母は漬け上がった梅を並べていました。大きなスモモ の木の下で、ちょうど木陰にならない午前中、すっぱい匂いが立ち込めて、赤 じそ色に染まった梅と、同じ色に染まって行く祖母の指先。口の中いっぱいに 唾液が出て来て、何で唾がこんなに出るんだろう、と不思議でした。 祖母が亡くなり、実家では沢山の梅を干すこともなくなりましたが、土用干 しをする祖母の丸い背中がずっと忘れられず、いつか私も梅干しを作ってみた いと思い続けて来ました。そして昨年、育児休業の合間に、やっと作るに至っ たのでした。 さて、今年は和歌山から4kgの完熟梅を取り寄せ、塩分18%と14%、 8%の三種類の方法で下漬けしてみました。昨年はカビを出してしまい、数粒 無駄にしてしまったのが悔しく、この一年は様々なレシピを見て、梅の扱い方 について調べました。特に下漬けの方法は千差万別で、その違いが面白く、梅 仕事の奥深さに引き込まれてしまいました。 今年は消毒を念入りにするのは勿論、梅一粒ひと粒に粗塩をすり込む方法を 試したり、梅の並べ方に気をつけ、重しが均等にかかるようにしたりと、去年 より少し手をかけて仕込んでみたところ、梅酢の上がりも早く、上手く漬かっ ているようです。 もうすぐ梅雨明け、土用干しの季節です。今年はどんな梅干しが出来るだろ う。家族が一番喜んでくれる味を目指して、「私の梅干し」を模索中です。