第 3826号2022.06.12
「きらめきの日々」
安井 あき子
長女が第二子を年子で出産して里帰りすることになりました。夫と二人暮らしから、 久々に賑やかになりそうな生活。うれしいけれど切り盛りできるのか心配もよぎる、 と思っていたら2週間早く生まれて瞬く間に幼子たちとの生活に突入しました。 上の子の「あっこ-(抱っこ-)」に全力で応え、料理は3食かつてないほど真面 目に野菜を刻み、お風呂は’かめ’のゼンマイのおもちゃを浮かべて、小さな肩と並んで 浸かりました。朝は8時半から公園に出かけて、幹を抱き、空を見上げて「オー」と感 嘆する孫の声に共感しました。家の階段は手をつないで幾度となく昇り降りをし、2階 のベットの上で寝転び「こぐまちゃん」の絵本を音読し、箪笥の奥の色鉛筆を探し出 してアンパンマンのぬり絵にいそしみました。(これは後にみんなが笑うほど下手で した!) 夜は夫が生まれた赤ちゃんのお守りを担当して、抱っこ、ミルク、おむつ替えの大活 躍。YouTubeの「赤ちゃんの泣き止む番組」まで駆使して、上の子の寝かしつけタイ ムに貢献していました。やむにやまれず駆り出されたのですが、満更ではなかった様 子。「可愛いね」を連呼していました。 やがて1ヵ月が過ぎ、お父さんのお迎えで4人家族は元気に帰って行きました。体は 疲れたけれど、ホッとし、任務終了の充実感に満たされ、と同時に可愛い残像がそ れを超えて寂寥感を拡げました。 今、思い返せば澄んだ黒い目を見つめ、笑いかけ、大きな泣き声を聞いていた 日々は、魂を奮い立たせるきらめきの日々でした。希望が遠のく昨今の思いをそっと 後ろに追いやって、リフレッシュしてくれたのかもしれません。せっかくだから、 気持ちを新たにして、またこれから前を見て行こうかな。