第 3821号2022.05.08
「パンドラの過去」
うちだまり(ペンネーム)
週末に昔の写真の整理をした。 特大サイズの段ボール箱に現像されたままの写真が眠っていることは知っていた。 子供も中学生になり、時間も出来た。体も元気。今しかない。 箱をひっくり返すと部屋中写真だらけになった。 私の決めたルールは3つ。 子供の写真は残す。夫の写真は選ぶ。自分の写真は捨てる。 言わずもかな子供の写真にはいちいち手が止まり、思いを巡らせ、涙で目が霞んだ。 夫の写真は風景が多かった。もしくは飲み会の写真ばかり。 問題は捨てることに決めていた自分自身の写真だ。 中学生の私は恐ろしく醜かった。 この顔で憧れの先輩に告白なんてしていたと思うと本当に恥ずかしくてしょうがない。 高校生の私は地味だった。 自分の位置を理解し、自信を失い常に苦笑いで後ろに引っ込んでいた。抱きしめてや りたい。 大学生の私は華やかだった。 男を知り、自分の見せ方を覚えた。垢抜けたファッション。笑顔も決まってる。 どれもこれも自分のようで自分じゃない。 物心ついた時から中身は何も変わってないのに、そこには変化に変化を重ねた他人 のような自分がいた。 結果、大学生の頃の写真だけ何枚か残すことにした。