第 3792 号2021.10.17
「祖母のおもちゃ」
知美(ペンネーム)
94歳の誕生日を迎えた機会に、祖母はいわゆるガラケーからスマホユーザとな った。 もともと頭が良い祖母ならスマホも使いこなせるだろう…それに、離れて一人暮 らしをしている祖母に動画や写真を簡単に送れるようになるし…孫の私と、娘で ある母とのちょっとした思いつきからであった。 そうして、祖母とピカピカのスマホとのご対面日、私は色々な操作方法を説明し た。 しかし、帰り際になって、 「頭が混乱して、全部分からなくなっちゃった。もう出来ないわ。」 今まで辛抱強く私の説明を聞いていた祖母が投げやりになった。それもそうだ。 使い慣れたガラケーからのスマホへの変更は、誰だって戸惑う。 祖母の年を鑑みれば尚更だ。 私も母も一種の罪悪感を覚えつつ、祖母の家を後にした。 ところが、心配は無用だった。 祖母から早速こんなメッセージが届いたのだ。 「よく分からず出来ませんが、送ってみます。」 出来ているよ…!?!! 数か月後の現在、祖母は、スマホのヘビーユーザに転身した。朝起きてから夜眠 るまで、常にスマホが傍らにある。 スマホは、祖母の良きおもちゃとなったのだ。 時代は流れるように移り変わっていく。しかし、いつの時代も適応性や柔軟性が あれば、何でも出来るのだと、祖母を見て実感した。 そんな祖母の遺伝子がほんの少しでも私の中にあってほしいと願いつつ、私はこ の新しいスマホ友とのやり取りを毎日楽しんでいる。