第 3783 号2021.8.15
「夏休み」
安藤 順(ペンネーム)
昼下がり、夏休み恒例の嬌声と水音が聞こえてきた。きゃーうわーどっぷん どっぷんばしゃばしゃ! お隣の庭、満々と水をたたえて午前中から太陽にさらした、幼稚園プールほ どもあるビニールプールだ。始まったか! 我慢できずそわそわとつっかけ 履きでフェンス越しに眺める。お隣の小学生と二人の友達が、水をかけ合い、 掌で水面を叩き、水しぶきを跳ね上げ、縁台から飛び込み、泳ぎ(泳げる ほど大きい!)、水鉄砲を空に打ち、水風船を芝生に投げつけ、思いつく 限りの水遊び。その幸せそうな表情といったら! いいなあ! 涼しいだろうな! おばさんも入りたいなあ。ささっと引き揚 げる彼らが目に浮かぶので部屋に戻る。 ママからはうるさくてすみませんメールがご丁寧に入るがとんでもない。欠か せない夏の風物詩である。遊びをせんとや生まれけむ、を年に一度つくづく実 感させてもらえる。 歓声を子守唄にうとうと。時に聞き取れる会話も。 ねーねー 学校はじまってほしくないひとー! 胸を突かれた。 残り少ない夏休みをこんなにも楽しく遊び狂いながら、もうじき始まる集団生活、 宿題や決まりが脳内を占領し出すのだろう。いじめや暴力などの問題がなくても それなりに緊張はするものだ。受験を控える子もいるかもしれない。 苦楽乗り越え折り合いをつけながら彼らも大人になっていくのだろうか。 目覚めるとさっきのあどけない言葉が蘇り、子供たちにエールを送りたくなる。 ねえ、君たち。夏休みは終わるけれど、終わるから夏休みは永遠なんだよ!