第 3760 号2021.3.7
「移りゆく街並みに思う」
佐保 摩耶子(ペンネーム)
幼稚園、小学校、中学校、転勤族の親のもとで育った私は転校が多かった。 1年間に2回転校したこともあれば、小学校は6回転校していた。そんな事情 もあって、私は思い出の地が多く、また幼い頃から友達を見つけることがとて も大事になっていた。友人とは長くつきあえる環境が殆どなかったが、その時 その時毎に絆を深め、大事な思い出となった。 過ごした地域の特徴や学んだところの印象も、心に残っている。例えば小1 の時の家はこの辺だったか等、旅行ついでに訪ねて行ったり、時間に余裕が とれるようになった今、そんなことをしながら昔を懐かしんでいる。ただ、 行く先々で街並みもずいぶん変わったと感じることが多い。 のどかな時代にのんびり育ったが、周りは緑がいっぱいで古い建物が立ち 並んでいたはずの場所も、今はすっかり区画整理されマンションやビル等が 立ち並んだり、お洒落な一戸建てがずらっと続いていたりに驚く。えっと、 このあたりだと思うのだけど違った?変わり果てた地域の姿に、住んでいた 面影はなく、時の流れを実感させられる。しんみりしそうになるが、一方この 場所にまた来られていることには感動する。私自身も月日を重ね成長してきた のだと思う。日々の疲れから解放され、自分を見つめ直し、リフレッシュでき るひとときなのだ。 昔の友達、住んでいた場所や学校、それぞれに思い出は数えきれないほど あるが、場所が目覚ましく変化していくのを知るのは少しだけ複雑な気分だ。 昭和生まれ、やはり古き良きものをみるとほっと安らぐタイプの一人なのだと 痛感する。 世の中は便利になり、無駄なものは省かれる。それでいいと感じる時もある が、昔ながらのものも、少しだけ残しておいて欲しい。ほっと出来る場所、 私にとっては昔ながらの風情が残る場所がそれである。そんなことを考えて いる私、やはり歳をとったのだと実感する今日この頃だ。