第 3757 号2021.2.14
「ヤドカリ母さん」
AYUMI
冷え症で足先が氷のように冷たくなる私は、こたつ無しには暮らせない。こたつで 足が温まると、体全体の血の巡りがよくなって室温を上げなくても無理なく過ごせる。 ただ、怠惰なる性格が全開になって、一旦入ると出たくなくなる。動かなくても 届く範囲に本やハンドクリームなどが増えていき、こたつの周りは生活感いっぱいで 目も当てられない。 爪の先ほどの罪悪感を持ちながらもこたつの魔力には勝てず、テレビを見ながら ウトウトしてしまう。寝返りを打つと天板ごと持ち上がり、ミカンが転げ落ちる。 夫は「ヤドカリみたいだな。こたつの高さより身幅の方が大きいことに気付けよ」 と呆れ顔だ。そして、「ヤドカリ母さん」と私を呼ぶのだ。 今年の冬は汚名返上で、室温を上げ活動的な暮らしをしようと決心する。ところが、 10年使ってきたガスファンヒーターが故障してしまった。寿命だと諦めて購入する ことにする。ガスメーターの検針票とともにファンヒーターの広告が入っていた。 今、予約すれば最新型の9万円以上もするものが、工事料、ホース代も込みで 7万円以内とある。 早速予約して、寒くなる前に取り付けてもらった。10年の間に暖房器具は驚くべき 進化を遂げていた。パワーがあり、LDK全てが暖まる。音も静か、自動的に空気を 対流してくれるので室温のむらがない。イオン空気清浄機もついていて実に賢い。 それなのに、1日中雨が続いた寒い日に、未練がましいとは思いつつこたつを セットしてしまった。そうなると、ぬくぬくの心地良さが私を腑抜けにする。 当分「ヤドカリ母さん」は続きそうである。