第 3690 号2019.10.13
「 プラムリーとジャム 」
山口恵子(長野県諏訪郡)
林檎の実る土地に越して来て一年がたった頃、地域のイベントでジャムを購入した。英国でジャム作りを学んだ女性のブースには、色とりどりのジャムが並んでいた。試食をしたりお話を伺いながら、プラムリーと柚子のジャムを選んだ。
イギリスで愛されているプライムリー種は、日本でも小布施などで栽培されている料理用の小さな青林檎。
ビンの蓋をそっと開けると、青みがかった洋梨色で、子供の頃おやつに食べたジェリー菓子のように少し固めだ。
スプーンですっくて味わうと、口の中いっぱいに心地よい酸味と果実味が広がって驚いた。地味な見かけよりずっと豊かな風味だった。それからしばらく、朝食のトーストやヨーグルトにプラムリーをのせるのが毎日の楽しみになった。
空になってしまったジャムを懐かしみながら、ジャムを煮てみようと思った。
林檎、苺、杏、桃、季節の果物を美しい色に変えてガラスの瓶詰めをいくつも作る。冷蔵庫の中にジャムの列を並べると、何故かいつもほっとする。
直売所でジャムにする果物を選んだり、朝食の楽しみが広がって、日々の暮らしに彩りを添えてくれるようになった。