第 3688 号2019.09.29
「 散歩 」
からす(ペンネーム)
一昨年前の秋、18年生きた雑種犬が天国へ逝った。
後半数年は、耳が全く聞こえなかった。
それでも気配と体内時計で、朝夕の散歩の時間には
当番である父にそわそわして近寄ってきた。
ご飯よりも散歩が大好きな犬だった。
両親の健康にいちやくかってくれた。
言葉も話せないのに、両親の心の支えだった。
いつもそっと居てくれた。
いつもはけ口になってくれた。
いつも黙ってなでられていた。
うっとおしいと思うときもあったに違いない。
天国へいくときも、すーっと消えるように
旅立っていった。
両親の心に大きな傷を残した。
やっと1年経った。
散歩をしていても、よその犬をみて
涙が出ることはなくなった。
気配を感じてそばにいてくれるに違いない。
そっと。