第 3686 号2019.09.15
「 柿キャッチ 」
ぶるーばーど(ペンネーム)
「ほら、いくで!」
じいちゃんが長~いハサミのようなものを大きな木の下から空に向かって構えている。じいちゃんとばあちゃんの家の裏庭にある大きな木。小3の僕にはとても大きな木だった。
横で見守っていたばあちゃんがやさしく声をかけてくれる。
「僕、がんばって!」
「うん!今度こそ、絶対、取ったる~」
僕は3回目のチャレンジに意気込む。やがて、ジャキっ!という音とともに橙色に光る玉が空から落ちてきた。
゛パシッ゛
今度こそ両手でしっかりつかんだ。
「よっしゃ~!やった~!取ったで~、じいちゃん!ほら見て、ばあちゃん!」
3回目にしてようやくキャッチできた僕は、じいちゃんとばあちゃんに何度も橙色に輝く柿を見せて喜んだ。
「僕、よかったね~」
「うまい、うまい!その調子や。次いくか!」
「うん!」
そのあとも空から落ちてくる柿に無我夢中で飛びついた。キャッチすることが楽し過ぎて、その後に食べたであろう柿の味は、正直、あまり覚えていない。。
「ありがとね!来年もまた僕にお願いできるかしら。」
「うん!僕にまかせて!」
今はもう、家の建て替えのためになくなってしまった大きな柿の木。でも、秋になるとじいちゃんとばあちゃんとの楽しい゛柿キャッチ゛を思い出す。
「ほら、いくで!」