第 3678 号2019.07.21
「 特別な時間、なんでもない時間 」
コバヤシナオコ(ペンネーム)
30年来の友人と待ち合わせた週末、ランチに立派なエビフライを食べた。自宅でフライをこしらえることはないので、ありがたみが増す。
友人は、エビフライは好物だがエビ天には興味がないと言う。
「えーー、そうなの?どうして?」と、タルタルソースをつけたエビフライにサックリかぶりつきながら、しばし揚げ物&甲殻類談義。
外はギラギラの太陽。この後の過ごし方、「屋外はやめておこう」と話し、スマホで調べ出すふたり。「美術館とか博物館とか」「週末だから混んでるよね」などと、コーヒー片手に作戦会議した末に、上野に向かった。
炎天下でも、大きな木がいっぱいあるから、ときどきそよぐ緑の風。お目当ての展示は1時間待ちだったため、次候補に切り替える。印象派の絵画を観て、ミュージアムショップでお買い物して、敷地内のカフェに。
「シャンシャンも暑いだろうねぇ」「中国では、パンダを間近で見られてしあわせだったなぁ」「一度でいいからさわってみたいね」
「どうやったら中国で飼育員になれたかな」「獣医師を目指すとか?」「いつ気づけばなれたかな。中学校くらい?」「中国では人気の職業なのかな」
これまでの人生、お互いいろいろなくもなかったけど、いまはおだやか。取り留めもない話をし、たくさんのことを知っているし、まだまだ知らないこともある相手について、またひとつ、知っていく。エビフライはいいけど、エビ天はダメ、とか。
若いころより味わいのある時間。特別な時間もいいけれど、なんでもない時間がまた、いいね。