第 3668 号2019.05.10
「 本当の「日日是好日」 」
えいち(ペンネーム)
私は小学校一年生の時から、かれこれ八年茶道を続けている。茶道は最近映画になったが若者には人気はなく、茶道をやっている人は周りにほとんどいない。確かに茶道は地味で、正座を何分もしなければいけないので、やりたいと思う人が少ないのだろう。でも、私には茶道を続けて良かったと思う出来事がある。
それは中学一年生の時。その頃私はスランプにおちいっていて。お点前を美しく行うことができなかった。同じことを先生に注意され続け、私はやる気をなくしていた。そんなある日、先生が私に、「落ち着いて、ゆっくりやってみたら。」
と諭してくださった。言われた通りにやると、ふと釜からたちのぼる湯気の匂いに気がついた。茶碗にお湯を入れる時にまろやかな音や抹茶の、夏の葉のような緑色。自分の周りのものを五感で感じて、時がゆっくり進むように感じた。茶道を続けたい、と思える瞬間だった。
その時から私は、普段から周りを五感で感じるよう、心がけるようになった。そうすると、夏と冬の空の色の違いや梅雨と秋雨の雨粒が落ちる音の違いなど、言葉では言い表せない、ささいな変化に気づけるようなった。それは私の短い人生の中で、小さいけれど深い喜びを与えてくれている。
中学生になった今、私の周りにはSNSやテレビなど、視覚的な情報が多すぎて、たまに疲れてしまうことがある。でもお茶室に行けば、見ただけでは見逃してしまう日常の幸せを感じとることができる。このような機会に恵まれ、本当に感謝している。
「日日是好日」。映画のタイトルになったことで有名になったが、本当にそう思う人は少ない。平凡な幸せに気づき感謝する心が、この言葉を生み出したのだろうと思う。