第 3660 号2019.03.17
「 ボランティアの日 」
柳田 由紀(国分寺市)
東村山市の久米川団地の一角に、電車図書館はある。
春には黄色い電車の周りに桜のトンネルが出来る。幼児や児童向けの種々の本が五千冊、本物の一輌の電車に乗っている。幼稚園帰りのママ達と子供達が連れ立って借りに来た時には、長い電車のシートがいっぱいになる。本よりも「運転席」が目当ての男の子達もいていつも、そこは混んで順番待ちになる。
私は「貸出し係」として、月末の水曜日、二時から四時半までの担当。このボランティアを始めて、そろそろ四年が経つ。中には五十年も係ってきた方もいて、私はまだ初心者だ。その長い係わりの友人から「人手不足なの」と誘われた事が、お手伝いをするきっかけとなった。
天気のいい日は早めに家を出る。自転車で二十分程の距離。
途中でお弁当を買い、電車図書館近くの都立公園の木陰のベンチで、一人で、ゆっくり昼食をとる。その合間に、見やると、木立の向こうを「西武遊園地」の短い電車が行く。
桜の頃は賑やかな公園も、夏の暑い日には人も少なく、木立に囲まれた日陰は爽やかな風が通り涼しく、一瞬、避暑地にでも来ているかのような錯覚に陥ったりする。秋には、紅葉の後、葉を落とした木立の梢の先に透明な青空が広がっているし、冬には、落ち葉を積んだ小道が、柔らかい光の中でふんわり温かい。どの季節も好きでここで過ごす一時、私は芯から寛いでいる。
昼食を終えると、さあ電車図書館へ。ペダルを踏みながら、今日も沢山、子供達が来てくれるかな、いっぱい本を借りてってくれるかな。電車好きのあの子は、今日は、運転席のマイクを握って、「どこ行き」のアナウンスをしてくれるかな…と思いつつ、一輌だけの黄色い電車を目指す。