「 ペッカリ太陽 」
塚田 有紀子(柏市)
冬休みが明け、新学期が始まる頃になると思い出す、年賀状の想い出。今は印刷が主流だが、小さい頃は1枚1枚手書きですごく手間がかかったものだ。
あれは小学校六年生の元旦、学校の友達からくる年賀状が楽しみで、朝、家族の誰よりも早く、ポストをのぞいた。すると私宛に、一枚の年賀葉書が入っていた。
その葉書には、山の絵が描かれており、その山頂から、タレ目の擬人化された太陽が顔をのぞかせて
「あけましておめでとう。ペッカリ太陽」
と書いてあった。
だが、差出人の名前がない。だれ?
その後、年賀状の束が届き、その奇妙な年賀状が、なぜ1枚だけで届いたのか、冬休み中ずっと気になっていた。
そして、新学期が始まると私は真っ先にその年賀状を学校に持っていき、友人達にみせて
「こんな年賀状がきたんだけど、誰だろう。ペッカリ太陽って書いてあるんだけど・・・」
えーなにー?ペッカリー?変なのーー!と大騒ぎをしたのだが、結局、差出人は分からなかった。
その学校からの帰り道、私は、いつも幼馴染の同じクラスの同級生と一緒に帰っていたのだが、その友達が
「それ、私なんだ・・・ペッカリ太陽・・・」
と、恥ずかしそうに、つぶやくように言った。
その年賀状は、近所のその友人が、わざわざ朝早く起きて、自ら私の家のポストまで届け、投函してくれたのだった。
ああ、だから1枚だけ早かったんだ・・・。
私は、その友達の優しい気持ちに気づかずに、学校でからかってしまったこと激しく後悔した。
ごめんね、Sちゃん・・・。
それから、もう一度年賀状を見た。そこに描かれていた、タレ目の太陽がちょっと泣いているように見えて、とても切なかった。
友達は、きっと新年の明るい太陽を描いていくれのに・・・。
こめんね、Sちゃん。年賀状、大切にするからね。
ペッカリ太陽の年賀状は、今でも私の宝物です。