第 3647 号2018.12.16
「 サンタクロースとその種明かし 」
入江タチヤナ(ペンネーム)
私は小学校4年生までサンタクロースの存在を信じていた。それは私が疑うことを知らない純真な子供だったからというよりは、両親の考えた演出が卓抜だったからだ。
12月24日から25日にかけての深夜、家族三人で食卓に置かれたクリスマスツリーを囲んでサンタさんを待っていると玄関でガタッと物音がする。母が、「サンタさん来たんじゃない。こっそり見に行ってみたら。」と言うので、素早く玄関にかけて行ってドアを開けてみるとサンタさんはすでにいなかったが、きれいに包装されたプレゼントが置いてあった。冬の深夜の冷気が上気したほほに快かったのを覚えている。
ところが、小学校4年生のクリスマスイブの晩に母から物音の種明かしをされ、サンタさんは両親であったことを告げられ、プレゼントを手渡された。不思議な物音は自転車の空気入れを立てておいて、自然に倒れるにまかせていたことで発生したものだった。
その種明かし以来、私がクリスマスを以前ほど楽しみにしなくなったことは言うまでもない。それに伴い、家のクリスマスの飾りつけも簡略化していった。私はサンタさんの不存在を知ることにより大人になっていったと思う。しかし、今でもこの時期になると子供の頃に感じていたクリスマスが近づくにつれての高揚感を思い出す。
私は今年子供を授かった。私の不思議に満ちた子供時代は戻ることはないが、この子とともに生きることで、幸せな子供時代を追体験することができる。昔のように家にクリスマスの飾りつけをし、サンタさんの演出も考えなくてはと思っている。