第 3641 号2018.11.04
「 玄関のカギは3本 」
仲途帆波(ペンネーム)
某日帰宅した妻が、即出かけると言う。?と思ったら「自転車忘れてきた」。
私も年に数回あるので驚かない。スーパーや郵便局、公民館なら盗難の心配はないが、最近は駐車違反の取り締りが厳しいので用心している。
さて20年ほど前に次女が結婚してから、当家は夫妻だけの生活が続いている。
先日のこと、私専用の赤い飾りの付いたカギを持って出かけようとして、ふと気が付いた。妻専用のカギが見当らない。まあいいかと、私は外出した。
帰宅してから「ピンクのカギが無いよ」と言うと、妻は゛訳がわからない゛という顔をした。
当家は近くに消防署があるせいで(たぶん)、空巣に入られたことはないが、用心のために玄関のカギについては、こんなルールを定めている。
お互いに外出する時は、自分専用のカギを持参すること。万が一のために物置に、紫のリボンを付けたカギを隠しておく。つまりカギは、3本で運用する。
今まで使ってきたピンクのカギの記憶がないらしく「私はずっと紫色のカギを使ってきた」と妻は言い張る。
80歳には未だ2年近くあるのに、認知症の始まりか?と心配になった。
今平均年齢は女性が6年以上長いが、そのせいかまだらボケは女性に多いとも聞く。
2~3日して妻は恥ずかしそうに、ピンクの鈴が付いたカギを私に見せた。
「折りたたんだ傘の中にあったのよ。それにしてもよく覚えていたわね」
自分のミスをあっさり認めず、そんな褒め方をされても答えようがない。
今後、重要な書類をどこへ仕舞い込んだか判らないとか、財布を落とすとかの金銭トラブルが起きないか、憂鬱になってきた。
5年日記に、妻認知症発症初日?と記入する。