第 3633 号2018.09.09
「 赤い靴 」
のん(ペンネーム)
何を着ればいいのか分からない。中年と言われる年齢になってから十数年来の悩みである。
若い頃とは体型、肌や髪の質が違ってきているため、ただ可愛いだけで選んだり、流行モノにうっかり手を出すと変なおばさんになってしまう可能性大だ。ある時からなるべくオーソドックスな色、形の服を普通に着るように心がけてきた。
そんな無難おばさんまっしぐらの私であるが、最近、美容室で渡されたファッション雑誌の記事の中で「赤い靴は使える」という見出しが目についた。曰く、デニムや無彩色系の服を合わせるといいアクセントになるらしい・・・なるほど。普段なら飛ばして読んでしまうところであるが、その時は妙に納得し、その瞬間、自分の中で一生縁のないと思っていた赤い靴の存在がいきなりクローズアップされた。
数日後、その雑誌に書いてあった若者向けの店へと出向き、まんまと赤いバレエシューズを購入してしまった。自宅の玄関に置くとそこだけスポットライトが当たっているよう。とても自分の靴とは思えず、そっと入れてみた足も自分のものではないようだ。
外に履いて行き、人と会うにはまだ少し気恥ずかしい。
もう少し涼しく、秋風が吹く頃になったら・・・この靴のデビューにはどの服と合わせようかと日々思いを巡らせている。