第 3611 号2018.04.08
「 鳩の子とはとこ 」
梅下 薫(ペンネーム)
6歳年上のいとこに、子供が生まれてから10年以上が経つ。
生まれたての子を病院に見に行ったのを覚えている。
元気な女の子だった。
当時の私は、それは゛姪っ子゛と呼ばれるものなのだと思っていた。
しかし、自分の姉ではなく、いとこであるお姉さんの子供なので、あの子は私にとって、゛はとこ゛なのだと親に言われた。
はとこ。はとこ。
甥っ子や姪っ子という名称に比べて他人のよう。
すごく隔たりのある関係のように思われて、私は゛はとこ゛という名称に溝を感じてしまった。
その゛はとこ゛は、今年中学校に進級をした。
今ではクラスの男の子と喧嘩をするほど元気なおてんば娘なのだそう。
進級のお祝いがてら、何かの拍子に、
「私にとってあなたは゛はとこ゛なのよ」と言った。
しかし、その言葉を聞いた新中学生は、
「私は鳩の子ではありません!」と、はっきりきっぱり否定してきた。
私は゛はとこ゛と言ったのであって、゛鳩の子゛と言ったのではないよ、と説明をしようと思ったけれど、
あまりに明るくはきはきとした物のいいように、圧倒されてしまった。
中学生ともなると、子供は頼もしい。
大人よりも新鮮でさわやかな「発言」に驚いてしまった。
この゛はとこ゛に、いつか「゛鳩の子゛ではなくて、゛はとこ゛だよ」と教えてあげたいな、と思いつつ、
まだ彼女の中では、゛鳩の子゛のままで良い気もしている。