第 3609 号2018.03.25
「 ヒマラヤの花嫁 」
YK(ペンネーム)
直感は根拠がない訳ではない。経験に基づき訓練されたスキルであると言われる。特に一人旅においては。
菜の花が咲く時期、レンガ造りのネパール空港に到着した。出口のタクシーの客引きの群れに、ここで一人で乗るのはちょっと危険かもという感があった。
見渡して、一人の男性に中心街まで乗り合いすることを頼んでみた。少し会話すると、その人は淡々と話始めた。「ここは子どもの頃、かわいがってくれた人の国だから来たんです。もうその人は亡くなっていて、家族とか誰かに会う訳でもないんですけど・・・」
私は根拠もなく、何らかの手がかりで探したらきっと何かつながりのある人に会えると言い切った。どこからかの余計でお世話な直感で。その人は特に興味もない様子で返事をしたのかも確認できなかった。
偶然帰国の日もその人は一緒だった。そして伝えてくれたことは、あのネパール人を知る人達と出会ったと。トレッキングルートのポカラから山道を長々歩いて写真を見せながら探したと話す彼の顔はとても生き生きとしていた。
子どもの頃かわいがってくれた人の名は゛スルジェ゛といい、本にもなっているという。
最後、彼は別れ際に「不思議な出会いでしたね」と言ってくれた。後で調べてみると゛スルジェさん゛の本は「ヒマラヤの花嫁」というタイトルで出版されていた。旅の思い出の中で、私とこの本も不思議な出会いとなった。