第 3607 号2018.03.11
「 おばあちゃんのたんぽぽ 」
薔薇水晶(ペンネーム)
祖母の家の整理を手伝った時の事。
食器棚の引き出しの奥に、ビニール袋に入ったかたまりを見つけた。
引っぱり出して、それが何か分かった瞬間、なんとも言えない気持ちがこみあげた。
それは、スーパーのお刺身に付いている飾りのプラスチックの小菊だった。
こどもの頃の私はそれを「たんぽぽ、たんぽぽ」と大喜びしたのだった。
それから、祖母の家に行くと、「たんぽぽとっておいたよ」と手の平いっぱいにのせてくれるようになった。
時が流れ、大人になった私はいつのまにかたんぽぽの事などすっかり忘れていた。
ビニール袋いっぱいの黄色の中に、ところどころ赤やピンクが混じっている。同じくプラスチックでできたもみじや桜だった。
祖母は、これも私が喜ぶだろうととっておいてくれたのだ。
「もうたんぽぽは欲しくないのかい?」なんて、一度もきかれなかった。
(これは捨てられないよなぁ)
引き出しの奥にそっと戻した。