第 3603 号2018.02.11
「 彼女と私を繋ぐ曲 」
たまごの貝殻(ペンネーム)
数年前、職場から帰宅途中に友人が亡くなった知らせが届いた。イヤホンで音楽を聴きながら道を歩いていた時だった。急なことに半分呆然として、その後も何度も何度も繰り返し同じ曲を聴いた。
そんな時期があったので、私にとってその曲は友人を思い出す少し大切な曲になった。
有名な外国のバンドの曲で、沢山のミュージシャンにカバーされているみたいで、カフェなどでいろいろなアレンジのその曲をしばしば耳にした。そんな時は、ああ、またこの曲、と友人のことを思い出した。その事はなんとなく誰にも言わずに、私と友人を時々繋いでくれる秘密のように思っていた。
仕事でちょっと困ったことがあって、カフェでお茶を飲みながら考え込んでいた時にもその曲が流れてきた。それは友人からの「大丈夫。」というメッセージのように思えた。何の対策も思いつけなかったけど、でもありがとね、と心の中で友人にお礼を言ってその日は帰宅した。
数日後、仕事の仲間たちと別のカフェで顔を合わせていた時に、ひょんなことからみんなが私を助けてくれる流れになった。みんなには私を助ける義務もメリットもなく、例え助けてもらえなくても、まあ、私の成績があまり良くない、というだけのことで済む話だったから、まさかそんな展開になるなんて、私はすごく驚いて嬉しくて泣きたくなった。感激してみんなにお礼を言った後に気がつくと、店内にはあの曲が流れていた、「ほら大丈夫だったでしょ?」と友人が言っているようでまた泣きそうになった。
たぶんこういう事は、世界、日常の中にきらきらと散りばめられていて、いろんな場所で不思議と当たり前のように捉えられているのだろうな、と思う。そしてそんな世界にいられて嬉しいな、と思いながら私は暮らしていく。