第 3595 号2017.12.17
「 サンタさんへの手紙 」
森 明日香(宮城県)
まだ長男がサンタクロースを信じていた頃の話です。
クリスマスが近づいた頃にいきなり宣言しました。
「サンタさんに手紙を書く」と。
友達から、欲しい物を手に入れるための有益な情報をもたらされたのでしょう。小学校に入って、ひらがなや漢字を覚えたことも原因の一つです。
便せんをあげたら、一生懸命に手紙を書き始めました。まだ幼稚園に通っていた次男も、隣に座って見よう見まねで。
困ったなあと思いながら、その様子を見ていました。実は、すでにプレゼントを用意していたからです。
しかも、新たに買い与える余裕はありません。
「これ、サンタさんに送って」
渡された手紙には、最新機種のゲームが記されていました。
それから、お小遣いで買ったらしい駄菓子付き。
「おかしでも食べてください」
手紙の文末に書き添えて。
クリスマスの朝、希望とは違うプレゼントを見て長男は落胆しました。
「サンタさんへの手紙、間に合わなかったのかな」
来年はもっと早く書こう、と呟きました。
長男が書いた手紙は、長く私の引き出しに入れていました。駄菓子と一緒に。ひっそりと。
翌年には手紙を書きませんでしたから、とっくにサンタの正体を見抜いてしまったのでしょう。
無理をしても、希望を叶えてあげれば良かったかしら。
今でも心残りとなっています。