第 3580 号2017.09.03
「 きらめき 」
マーキュリー(ペンネーム)
楽しかった大阪への旅行
はしゃいでいた家族の笑顔
もう一度あの時を味わおうと
写真を取り出してみるけど
同じ風景が写っているのに
あの時のきらめきがないよ
心がときめいてこないよ
デジタルカメラもスマートフォンも
肝心なものを残してくれない
あの日、瞳に映った全てが
きらきらしていたというのに
あのきらきらはどこへ消えたのか
「あら、写真を眺めているの?」
そう言って母がやって来た。
「うん、そうだよ」
と私は返事した。
「見せて、見せて」
妹もはしゃいだ。仕事から帰った父も加わり、
小さな部屋にあるこたつの中に四人で入って写真を眺めた。
「ぎゅうぎゅうだね」
と私が言ったら、
「ほんと、ぎゅうぎゅう」
とみんな笑った。
母が作った紅茶を飲みながらみんなでいつまでもしゃべり続けた。
気がついたら私の目の前は、またきらきらだけになっていた。