第 3575 号2017.07.30
「 その時なのだ 」
断捨離子(ペンネーム)
一年半ほど前に結婚した長女が、新居を構えた。これを機に、自分の部屋に残してあった大量の荷物を持っていってもらうことにした。残りの荷物は「処分して」と言われたが、それがまた多い。古着やら子供時代のぬいぐるみなどは大袋にいれて処分したが、美大入学のため、一年通った予備校時代のデッサンやら、デザイン画まで出てきた。これらのおかげで、希望の美大に入学できたのだし、今でも時たまデザインの仕事もしている。それらを捨てるのが何だかもったいなくなって、「いいの」と念押しのメールをしてもあっさりと「いいよ」の返事。「お姉ちゃんがダビンチなら、これらの習作も美術館のガラスケースに入るのにね」と二女に言っても「お姉ちゃん、ダビンチと違うし」と冷たくあしらわれた。
多分、今、捨てる時なのだ、と思った。十年以上一度もさわらず、ほっておいたものだ。目をつぶって、何回かにわけて処分した。
その時なのだと自分に言いきかせて。
うちで一番日当たりのいい、今は主のいない長女の部屋に入る。捨てきれなかった、淡い色付けが気に入った水彩画が壁に飾ってある。他、未練がましく、引き出しに5~6枚残っている。いつの日か、長女の子供が「おばあちゃん、私の描いた絵あげる」という日がきたら、これらを捨てて、その絵を壁に飾ろう。