第 3574 号2017.07.23
「 サンドイッチ屋の店主の話 」
杏雨(ペンネーム)
私が毎朝、出勤前にサンドイッチを買っていた店がある。
夫婦でやっていて、先代から数えて創業70年のサンドイッチ屋だ。残念なことに店主高齢の為、年末に廃業してしまった。
今日、閉店した店舗の前で店主に再会し、少し話をした。
店主は働いていた時より穏やかになった気がした。
「この間、スーパーで食パンを買ったよ。よその店でパンを買うのなんて50年振りだ。かみさんと一緒にベーコンとレタスとキュウリを挟んで食べたんだ。
いやぁ、やっぱり美味しいねぇなんて、かみさんと2人で話したよ。
かみさんにはゆっくり楽させてやりたいんだよ。あれには悪い事一杯したから。」
と笑う店主は店で奥さんによく怒られていた。
客の前で喧嘩もしてた。
それでも、タマゴサンドはいつだって絶品だった。
そして、廃業してもまだサンドイッチ作っている。
今度は奥さんと2人で食べる為に。