第 3557 号2017.03.26
「 春風によせて 」
NW(ペンネーム)
新築した我が家の小さな庭に川の流れの様に敷いた五色石、そっとレースのカーテンを開けてながめる。
縁取りは玉竜で土留めをした。
その緑と小石のコントラストがとてもよい。
四国からはるばると運ばれて来た小さな小石の五色石を五十袋、自からの手で敷いてみた。術後四年を経て余命はどのくらいか、あえて医師には尋ねない。こんなに余力があることそして今生きていることの幸せを感じているから。
三十二年前主人を亡くし、当時中学生になったばかりの一人娘が成長し私の為に手摺のついた立派な素敵な終の棲みかを建ててくれた。家の囲いには全部この石を敷きつめようねと言ってくれる。
私は大きくうなづいた。
春風がレースのカーテンをゆらす。
座椅子にゆったりもたれながら来し方を振り返る。
思い出深い四国への旅は春三月に主人と、そして時を経て娘と二人で行った。
桂浜や四万十川の風景が鮮明によみがえる。楽しく幸せだった。
そして今も幸せを感じている。
庭の木々には、時折小鳥たちが姿を見せてくれる。春を告げるうぐいすの一際たかい初音を今年も聞けたことに感謝しながらカーテンをそっと閉じた。