第 3555 号2017.03.12
「 娘のプレゼント 」
高田眞三(杉並区)
五人の子どもの長女が、高校を卒業した時のことを思い出す。とても嬉しかった。真っ先に卒業証書をもって、「卒業したよ」と家に帰って来ると思っていた。夕食が終わっても帰って来ない。
私の忍耐は限界に達していた。ようやく帰ってきた時、「何ですぐに帰らなかったのよ」と怒ってしまった。しばらく「親の気持も少しは解る人になりなさい」とか私のお説教を聴かされたあと、娘が「パパ、これ」と言ってプレゼントをくれた。
卒業式を迎える迄の間、何日かお弁当屋さんでアルバイトをしていた。生まれて初めて自分で働いてまとまったお金を手にして嬉しかったようである。何に使おうかと考えた末のプレゼントであった。それは、茶色の革のショルダーバッグ。その鞄をいろいろな店で探したために、帰りが遅くなったようだ。
鞄はまことに使いやすく、毎日のように、娘のうれしい気持ちを感じながら擦り切れるまで使った。その娘も来春は息子の高校卒業を迎える。