第 3553 号2017.02.26
「 素敵な女性 」
ねこ(ペンネーム)
通勤電車で、とても素敵な女性にであった。
それは、帰宅を急ぐ人たちで混み合った通勤電車。皆少し疲れた表情で、ヘッドフォンで音楽を聴いたり、スマートフォンでメールを打ったり、自分だけの世界に浸っていた。残業を終えた私は、優先席の前に立ち、吊革につかまりぼんやりと車窓を眺めていた。
私の前に座った中年女性は、静かに本を読んでいた。白髪の混じったショートカットの似合うその女性は、老眼鏡さえも粋な小物に見えるほど、おしゃれで、素敵な雰囲気を醸し出していた。
そんなとき、次の停車駅から、杖をついた老紳士が乗ってきた。優先席はいっぱいだ。仕事帰りで疲れた人たちは、席を立つ気配が無い。その時、その女性がさっと席を譲った。「どうぞ、こちらにおかけください」老紳士に手を添えて、笑顔で席まで誘導した。
こんなスマートに席を譲る人を見たのは初めてだ。周囲に、爽やかで、暖かい雰囲気が立ち込めるようだった。老紳士も、女性のスマートな誘導に、嬉しそうに座席に腰を下ろした。
紳士が、帰り際に「さきほどは、ありがとう」の言葉をかけると、「いいえ、お気をつけてお帰りください」と優しい笑顔で答える女性。私も年を重ねて、こんな素敵な女性になりたいと思った。