第 3548 号2017.01.22
「 青春時代 」
匿名
「妹みたいに好きだよ。」その一言で私の恋は終った。思えば、大学の三年間は、いつも彼の姿を追っていた。食堂の窓からグラウンドの彼を見ていたり、サークルの部屋で友達と話している彼の声を背中で聞いたり、それらの時間がとても幸せだった。誰にも知られないように私の心の中に大切にしまっておいた。でも彼が来年卒業するという年の十二月、このままもう逢えないのかと思うと、私の気持ちを伝えたくなった。私から電話をし喫茶店で待ち合わせをした。いつもの笑顔で「どうしたの?」と聞かれた。
「ずっと好きでした。」と言った。彼はびっくりして、少し沈黙が続き、「君って勇気があるね。でも、こういう事は、事実をはっきり言った方がいいと思うよ」と言って先の一言になったのだ。
合宿、大学祭などの楽しかったことを話し、彼は最後に「君なら大丈夫だよね。あと一年と三ヶ月楽しい大学生活を過ごしてほしい。」と言って駅まで送ってくれた。帰りの電車の中で泣きたいのをじっとこらえた。私はそんなに強くないと心の中で叫んでいた。
あれから数十年の時が流れた。ところが五年前サークルの新年会で再会した。私に気づいて、彼はびっくりしていた。あの笑顔も話し方も大学時代のままだった。会の終わりに彼は私の方へ歩いてきて握手を求めてきた。彼は握手をしながら「変わらないね、元気そうだね。」と言った。
私は胸がいっぱいになって「ありがとうございます。」とだけ言った。大学時代のことが頭の中で次から次へと浮かんだ。
それから毎年一回、新年会で逢うことになった。集まる人数が多いので隣にすわって話すことは無いけれど、元気な彼の姿を見ることが私の一番の楽しみになっている。
青春時代にタイムスリップできる幸せの時間になっている。