第 3536 号2016.10.30
「 実家の犬 」
杏 雨(ペンネーム)
実家の犬が死んだ事を母からの電話で知る。
オスで名前はダイ。
14年も生きれば大往生だろう。
ダイと私は性格が合わなかった。
「合わないので、このくらいの距離感であたらず、さわらずいきましょう。」って空気をお互いに出し、絶妙な距離感で暮らしていた。
私が実家を出る時も普通。
たまに帰省しても普通。
寂しそうにも嬉しそうにもしない。
両親の犬なので、私は世話もしない。
吠えられたり威嚇された事も一度もない。
疎遠。無関心。まさにそんな仲だった。
昔、台風の夜にダイと実家に2人きりになった事がある。
いつもは半径1m以内に近づけないのに、この夜だけはピッタリくっついて寝た。
本当に一回きり。
これは両親も知らない2人だけの秘密だ。
ダイ、死んだって聞いてもやっぱり寂しくはないや。
でも、あの台風の夜はありがとう。