第 3532 号2016.10.02
「 どんな顔 」
有の実(ペンネーム)
昨秋のことだった。友達とバラ園を訪れることにした。行った事もない場所で、家からもかなり遠いが、今はPCで便利に検索できる。乗り慣れない線に乗り、乗り換えながらたどり着いた。
バラもきれいだったし、友達との会話も楽しく、満たされた気分で乗り換え駅まで戻ってきた。
気づくと、ここはあのゆるキャラで有名な街ではないか。ふーん、こんな街なのか。大都会ね。ぐるりと見渡した。その時、途方にくれた顔の老婦人が近づいてきた。「あの……何々はどこですか?」教えてあげたい。でも、わからない。「ああ、ごめんなさい。わかりません。私も初めてなので……」
婦人が去って、久しぶりだな、と思った、道を訊かれるのは。かつて、うちの近くでも、あるいは遠いところでもしょっちゅう訊かれていた。一日二回なんてこともあった。
「道尋ねられ顔」ってあるのかしら。どうせ、看板みたいな顔よ。
そう思って、娘にこぼすと「それは親切に見える顔なのよ」
そうか、そうだった。最近訊かれないのは、優しい顔でいないせいかしら。優しい表情で、街を歩こう。そういう顔でいたいと決意した。
ちなみに姉の夫は「店員間違われ顔」だそうだ。これは一体どういう顔だろうか。