第 3531 号2016.09.25
「 歌碑を訪ねる小さな旅 」
生田 佐代子(豊中市)
夕焼け小焼けの赤とんぼ
負われて 見たのは いつの日か
幼き頃、よく口ずさんだ童謡「赤とんぼの唄」、仲良し三人組の年二回の小さな旅は「私一度、赤とんぼの歌碑で有名な兵庫県のたつのに行ってみたいんだけど…」とメンバーの一人Sさんからの電話で決まった。
私たちは千里ニュータウンが万国博覧会で売り出した土地の分譲地を購入した頃からのもう四十五年来の友人でもある。子供たちも同年代で当時からの家族ぐるみの付き合いであり、七○代の三人の仲間の趣味は美術館巡りやウォーキングで史跡めぐりをすることだ。
「今回は私が全部計画して、行程や昼食の予約も入れておくからね」と結構な話にSさんに感謝、すぐにお互いの日程の調節もついた。
三木露風の歌碑めぐりの途中、真新しいリニューアルされた世界遺産、姫路城のすばらしい姿もはっきりと車窓から見ることができ堂々と佇む姿に思わず息をのんだ。
対象的に小さなひなびた歌碑の町、たつのは武家屋敷、白壁の土蔵が今なお残る「播磨の小京都」といわれる静かな処である。
「童謡の小径」の前に佇む八つの歌碑の前に立つと各々のかわいいメロディーが流れてくる。
懐かしいメロディーを一緒に口ずさんだり、ハーモニカ奏者であるSさんの奏でる音色にうっとりしつつ、このひなびた、けれどしっかりと町を大切に想う人々の気持ちを思い、しばし郷愁を注がれるひとときを過ごすことができ、あっという間に楽しい時間は過ぎ、歌碑、素麺、醤油の町たつのを後にした。
もうすぐ紅葉谷の楓はまっ赤に紅葉し、その中を赤とんぼが舞う季節となるだろう。