第 3521 号2016.07.17
「 ひまわりの咲く頃に 」
ひなちゃんのおばあちゃん(ペンネーム)
今から10年程前、私は残業も夜勤もある仕事についていました。毎日忙しく、晴れた日は、時間のわかりやすい自転車を使い通っていました。
夏前ふと気付くと通り過ぎる畑の隅に、子供の腕程もある一本のひまわりと思える枝を見つけました。どれ程大きな花をつけるのかと楽しみに見ていました。しかし、他のひまわりが大きなつぼみをみつけ、夏の陽に向かって花びらを開こうとしても、一向につぼみは見えません。
私が年子の子供をあわただしく育てていた頃、農家だった父が「根をしっかり育てればそれで半分、肥料は多くても少なすぎても、やる時期を間違えてもダメだな。花をつけなかったり、ひ弱ですぐに倒れてしまうこともある。ゆっくり待つことも大事だ。」と話した事がありました。私の子育てを案外気にしていたのかもしれません。
娘は、当時多感な高校生でした。中学まで、夕御飯を作っていてくれるような、やさしく明るい子でしたのに、高校入学からしばらくすると休みがちになっていました。親子で話し合えば最後はどなりあいになってしまう、そんな日々でした。いったい何が足りなかったのか、間違えたのか、ひまわりと娘の顔が重なりました。
それからしばらく、暑さと疲れでバスで通勤していました。ある日、久しぶりにその道を通ると遠くからでもわかる程黄色い小ぶりの花を何十個もつけたひまわりが見えました。枝分かれしさらに枝を分け、空を覆うように咲いていました。皆同じ時期に、大きな花をつけるものと思っていた私でした。それぞれにそれぞれの咲きようがあったのです。
娘は、2年前に心やさしい男性と結婚し、今年女の子を授かり、子育て奮闘中です。