「 19年目のゴール 」
うーちゃん(ペンネーム)
同じ年の夫と私は、今年の6月に結婚19年目を迎えようとしている。幸い二人の子宝に恵まれ、親としての喜びや苦労を分かち合うことも多く、お互いを理解する為の喧嘩と仲直りも数知れず繰り返して、夫婦としてやってきたことを思い返す。
いわゆる夫婦の危機というやつに直面した時期には、もう別々の人生を歩まなければならないのかと、其々が思い悩み本当に苦しくて辛かった。
「夫婦とは、同じ飛行機に乗っているようなものです」
今思えば、結婚式で牧師から言われた言葉には、希望を意味する続きがあったはずだ。
でも、乱気流に飲み込まれ、もう墜落してしまう覚悟でいた私達も確かにいたのだった。
そんなこんなを乗り越えて暫く経った頃、多摩川ウォーキングというイベントに私と一緒に参加したいと夫が言った。楽しそうだったので、ホームページから私が申し込んだ。健脚コース19キロを申し込んだよ、と報告すると、自分はハーフコース9キロを申し込むつもりだったと夫が苦笑いして言った。こういうところに性格の違いが出るが、無理をしないで歩こうと約束をして、本番に向けて毎日7キロ歩くようになった。
5月10日。二子玉川のスタート地点には大勢の参加者が集まった。ここから聖跡桜ヶ丘まで歩くことが出来るのだろうか。
朝の光を散りばめた川は美しく、上流に向かって歩いていくと、空を飛ぶ鳥たちが羽を休める樹木の息吹が、どんどん力強く感じられた。凄いスピードで駆け抜ける自転車にヒヤッとする瞬間もあったが、ヒラヒラ飛んでいるアゲハ蝶を見かけると、のんびりいきましょう、と道案内されている気分になった。
「身体は大丈夫?」「一緒に歩けて嬉しい」そんな4時間40分だった。ゴールのアーチが視界に入ってきた瞬間、名残惜しい気持ちが湧き上がり、泣きそうになった。
離婚しないで本当に良かった。一緒に歩けて本当に幸せだ、と感じた。