第 3503 号2016.03.13
「 卒業式の光景 」
M・A(ペンネーム)
幼稚園の卒園式は、しめやかな感動に包まれながらも、お母さんたちの顔は光輝いて見えました。
これから始まる小学校での生活に、期待を寄せていたのでしょう。
自宅にはつややかなランドセルが置かれていることが想像できました。
小学校、中学校と学年が上がるにつれて、お母さんたちの顔には疲労が浮かぶようになりました。
家事と育児をしながら家計を支えている方は珍しくありません。
けれど、まだ続く学校生活に対して、気持ちを引き締めていることがわかりました。
初めての高校の卒業式に参列した時……。
最後の制服姿よりも、膝をそろえて保護者席に座るお母さんたちから目を離せませんでした。
高校だけは卒業させないければと、必死に三年間を過ごしていたのかもしれません。進学や就職を機に、手元から手放すことへの覚悟をしていたのでしょうか。
頬の肉が落ち、乾いた髪を垂らしているお母さんたちの姿を見て、熱い想いが込み上げました。
高校の卒業式は、子育ての締め括りです。
十八からは、ほぼ大人と同じ扱いをされます。
もはや続きがない巣立ちの日を迎えたのです。
小さく縮んだお母さんたちを私は心から尊いと思いました。