第 3502 号2016.03.06
「 沈丁花の憂鬱 」
撫子(ペンネーム)
玄関先の沈丁花の蕾が、大分膨らんできた。この季節になるといつも思いだす言葉がある。
「沈丁花の憂鬱」って知ってます?学生時代、担当の先生に聞かれた。とっさのことで、何のことか答えられないでいると、「今頃の教師の気持ちです」といわれた。卒業間近になると、教え子との別れが淋しいと。先生方は、卒業式なんか慣れっこになっていられるのだと思っていたので、それを聞いた時、なんだか、有り難く嬉しい気持ちになった。
「送る側と、送られる側では、送る側のほうがより淋しいのです。
送られる側は、先に新しい希望が待っていますね。でも、送る側は、今までの暮らしを続けなければならないのですよ。」なるほどと、私は大感激してしまった。
その頃、大好きな先輩の卒業が近づいて、淋しくてならなかった。送別会に皆で送る言葉をスピーチすることになって、私は万感の思いを込めて、「送る側と送られる側とでは・・・」と述べたのだったが、誰一人耳に止めてはくれなかったようだった。
キャンパスの沈丁花、今頃咲いているかしら。