「 春を待つ夜に 」
ふくねこ(ペンネーム)
暦の上では春を迎え、日差しにも真冬とは違った温もりを感じるこの頃。とはいえ夜の冷え込みはまだ気を許せない厳しさがあり、家族一冷え性の私は、この冬の夜の寒さは身にこたえ、心から春が待ち遠しくなる。
そして毎年この時期になると欲しくなるものがある。電気毛布だ。リビングは夜でも人の存在があるからまだましだが、寝室は就寝時しか人が入らないので、大層冷えている。でも夫が、寝室に暖房器具を入れたがらないので、寝室の冷えは誠に辛い。就寝前に寝室に足を踏み入れると、大袈裟ではなく、冷蔵庫内に立ち入ったような趣がある。
当然布団の中も冷えて心許ない。横になると暫くは冷えから手足の指先がジ~ンと痛み、朝方には肩まで冷えが迫り、肩凝りが激しい。そんな私の辛さを電気毛布が癒してくれるのではないか?と期待を抱くのだ。
しかしこれも隣に寝ている夫が反対した。
「他に温める方法を試して、それでもダメだったら、電気毛布の購入を考えよう。例えば湯たんぽはどうだ?」
と。私は独身の頃に実家で湯たんぽを使っていたからその良さは分かる。しかし最近、肩を痛め重い物を持つのは辛い。それに湯たんぽの準備も面倒で、実践に移せないでいた。
ところが先日の夜。布団に入ると何やら生暖かい。見れば、4リットルサイズのウイスキーの、プラスチック製空き容器が二つ、布団の中に長々と転がっていてびっくり。容器の中にはお湯が入れられていて、布団の中も温まっていた。寒い寒いと嘆くだけで、寒さ対策を一向に講じない私に代わり、夫が用意してくれたのだ。その夜の温かかったこと!
以来夫が、夜になると即席湯たんぽを用意し、布団に忍ばせてくれている。おかげで身も心もポカポカになった。不器用で口下手な夫だけど、その心の温かさは私が好きになった人だけある。
また今年も電気毛布は諦めることになりそうだ。