「 難敵の「類」 」
唯生絵(ペンネーム)
決して片付け上手とはいえない私だが、不要な物を潔く処分するのは得意だと思っている。先日も雑然としてきた棚の中を整理した。
本、書類が快調なペースで減っていく。だが、いつもの難関に差し掛かると途端に手が止まった。手紙類だ。この「類」が曲者で、きちんとした葉書や便箋に綴られた手紙以上に「メモ書き」が大好きなのだ。
チラシの裏やノートを1枚破ったものに書かれた文字や文章は、見るたびにその人のその時の状況や気持ちをストレートに表現している気がして、どうしても捨てられない。その中には自分で記したものあり、テレビで見て「美味しそう」と慌ててメモしレシピには、少し醤油のシミがついている。買い物メモのチョコレートの文字が二重線で消されているのに最後尾に小さくチョコと追加されているのは、体重が気になりだした頃だったと、すぐに思い出せる。
数ある「類」の中でも難敵は子ども達からの物だ。
母の日以外にイレギュラーで受け取った肩叩き券は、きっと自分の握りこぶしを見ながら模写したであろう手のイラスト。(その証拠?に左手のみ2つ描かれている)消しゴムで消された努力の痕跡を見るだけで鼻がつーんとくる。
極めつけはお詫びの手紙。私の留守中に花瓶を割ってしまった過程が時系列のイラストで表現されている。「ガチャン!」「あ、いけない!」の吹き出し付きだ。「ごめんなさい」が何度も書かれた文は「わたしが、一ばんたいせつにしているノートのかみにかきました。」という説明で終わっている。忘年会のホロ酔い気分で帰宅した玄関に置かれたこれを笑い泣きしながら読んだ、その時と同じ状態に陥る。もう内容を全部記憶しているにも関わらず…。
こうして「難敵」は「宝物」だと確信して定位置に戻す。減らすどころか、いかにも眠そうな文字の「お母さん、7時に絶対起こしてね」の新入りのメモが加わってー。