第 3487 号2015.11.22
「 私の東京地図 」
野村 祐司(国立市)
就職で上京してから早いものでもう20年が経とうとしている。
上京当時から今日に至るまで私の根っからのお上さん気質は決して色褪せることなく、そのおかげで私の東京地図はどんどん更新されている。
しかし、その中で明らかに変わったことがある。情報収集の仕方である。
上京直後、知り合いもいない私が最も頼りにしていたのは、ある情報雑誌だった。当時はその雑誌を握りしめて、今週は浅草、来週は吉祥寺といった具合にまさしく東奔西走していたものだ。
それがいつしか恋人や友人が出来、彼、彼女たちからの紹介で、情報雑誌が決してフォローしないような地味で猥雑で、でも何だか懐かしさを感じさせる場所にも足を踏み入れるようになった。
この時、ずっと観光客のように恐る恐る東京を眺めていた自分がほんの少しこの街の内側に入り込めたような気がして嬉しかったのを覚えている。
その後、ほどなくして私を襲ったのがIT革命である。片手に収まるその情報端末を使えば、☆つきで美味しいお店も探せるし、最新のスポット、イベントもほぼ見逃さずにいられる。
「なんて素晴らしいんだ!」気づけば私はヤツの虜になっていた。
そう、他の多くの日本人と同じように。
しかし、今ではそんな完璧なはずの相棒とも意識的に距離を置こうとしている自分がいる。
なぜなら全く先入観がない状態で訪れた場所で感じた感動に勝るものはない、という真実に(ようやく)気が付いたからだ。
だから、今後、私はなるべく自らの経験に基づいた勘だけを頼りにこの東京の街を練り歩いて行こうと思う。
かけがえのない私だけの東京地図の完成を目指して。