第 3478 号2015.09.20
「 一通の幸せ 」
erina(ペンネーム)
家にいても少し肌寒いと感じる季節になった。
そろそろ葛湯が恋しくなる時期になったものだと
しみじみ感じながら、作り始める。
先日の出来事は今でも頭の片隅を遮る。
人生で初めての恋が終わったからだ。
情報社会における伝達の仕方は、こんなにもあっさりなのかと思わされた。
画面に映る文字は、冷たくて想像通りの表情をしていた。
静寂な部屋にぽつり、自分の押し殺した泣き声が響き渡り、腫れた目をこすりながら何度も文字を追った。
夜の気配はお構いなしに私を闇の中へと引きずり込む。
朝出かけるにも、なんだかやるせなかった。退屈な日々が始まったと思った。
一通の通知も見る気がしなかった。
我に返ったのは一週間後だ。
未開封のメールを思い出したのだった。
だんだん抹茶のいい匂いがしてきた。
できたてが入ったマグカップに手を触れる。
たった数行の言葉なのに、この文字だけは...
「あったかい」
少し緩んだ頬に手を添えてみる。
そして小さな幸せをまた一つ手にして私は思うのだった。
「小さな幸せでもいいやん。
ただ、おいしいと思えるだけでも私は幸せや思う。」