「 伝えたい言葉 」
KEI(ペンネーム)
先日、仕事が終わったあと親父からメールが入っていた。
『じいちゃんが亡くなった』と。
わたしの祖父母は昔からとても仲が良く、おしどり夫婦だった。
どこに行くにも一緒。祖父は祖母のことが大好きで、いつでも『はあ、大丈夫か』と気にかける。そして口癖のように言っていた。『ばぁちゃんが死んだら俺もすぐついていく』と。
だが一昨年の夏に祖母の体調が急激に悪くなった頃、同時期に祖父の認知症が進みはじめた。
祖母が危篤状態になっていたころには、祖父はわたしのことも、父のことも認識できないほどになっていた。
施設に入居していた祖父を父と兄たちは、祖母のもとへ連れ出す。
無言で目の前の、危篤状態の祖母を見つめる。やはりわからないのか?
さぁ、行こうかと皆で病室を出ようとしたとき祖父は黙って布団を祖母にかけた。
その話を聞いてわたしもぎゅっっと心が締め付けられた。その後にわたしも祖母のもとへかけつけた。
手を握り続け、一晩隣で眠った。遠方に住んでいてなかなか会いにこれなかったことをすごく後悔した。涙が止まらなかった。だからその時間を埋めるように、ずっとそばにいた。
その二日後に祖母は息を引き取る。
亡くなったことを父は祖母に後日伝えると、『なんでなにもしてやれなかったんだ…』と。
その一年後に祖母はあとを追ったのだった。
人はいつなにが起こるかわからない。
だから伝えたい言葉は、その瞬間に伝えたいと思う。
会いたい人には、後回しにせず会いに行きたいと思う。
家族、友達、恋人、仕事仲間…
特に感謝の気持ちを。伝えそびれる『ありがとう』の言葉。
わたしの手帳にはいつも大好きな祖父母と3人で撮った写真をいれている。
辛いことがあれば手帳を開く。それを見たときは不思議と涙がボロボロこぼれ、言葉には表せない安心感に包まれる。素直になれる。
そんな風にそばにいなくても、誰かの力になれる二人は本当に素敵だ。
そして大切なことを教えてくれた。
伝えたい言葉は、伝えたい瞬間に。